ベビーセンサーBaby Ai開発までの道のり

Baby Ai開発の道のり

ベビーセンサーBaby Aiの歴史は古く、1990年にさかのぼります。
元々の開発は株式会社リキッド・デザイン・システムズではなく、SONYの脈診研究所からでした。SONYの脈診研究所は後に『生命情報研究所』へと名称を変更し、生体信号を電子技術で検出することに成功しました。

『生命情報研究所』はSONY創業者井深大氏の肝いりプロジェクトとして推進してきましたが、1997年に井深氏が亡くなり2000年代に解散となります。

井深氏の遺志を受け継いだ高島氏が設立したエム・アイ・ラボが『生命情報研究所』の研究を受け継ぎます。そして2002年、これまでの研究が実り、本製品の根本技術である共著論文「空気動圧による呼吸・心拍・体動情報の計測」を岩手大学と発表します。

その後、非接触型センサーのVitalセンサー開発を目指しました。

Vitalセンサー論文に強く共感した当社が2013年に研究を引き継ぎます。長い苦労の末、2017年2月に「トロイメライ」(定価48万円)を発売しました。「トロイメライ」はiPhone連動型呼吸センサーで、主に大学や研究機関用として幅広く使用されています。

「トロイメライ」は介護用としての機器です。当初は介護用機器としてスタートしました。

新生児・赤ちゃん向け呼吸センサー開発動機

NHKでニュースやドキュメンタリーで幾度となく紹介された、保育園でのSIDS(乳幼児突然死症候群)による死亡事故。SIDSは原因不明の新生児や赤ちゃんにとって恐ろしい病です。

SIDS以外にも厚生労働省発表によると、不慮の事故における0歳児の84%は窒息による死亡事故という結果が出ています。

窒息はSIDS同様短い時間で、重大な結果(後遺症や死亡)を招く可能性があります。

しかし、SIDSや窒息事故も発見が早く、心肺蘇生を早急に行えば後遺症なく助かる可能性があります。

「呼吸や息を感知できる「トロイメライ」を何とか乳幼児向けに仕様変更できないか?」

当社が生み出した製品で1人でも多くの犠牲を防ぎ、赤ちゃんの命を助けたいという思いから「新生児呼吸センサー(ベビーセンサー )プロジェクト」はスタートしました。

乳幼児の呼吸感知成功へ

今まで大人でしか実験していなかったVitalセンサー技術。これまでの最小実験は30kgの子豚で睡眠中のVital信号(呼吸&心拍)を検知できました。しかし体重3kg前後の赤ちゃんは未知の体験です。

乳幼児向けに開発するためには、協力できる赤ちゃんがいなくてはなりません。偶然、当社従業員が0歳児の赤ちゃんを育てており、協力をお願いいしました。

実験を始めた当初は赤ちゃんはレム睡眠が多く、寝返りなどの動きが激しい為、呼吸や息をセンサーで感知するのは難しいかもしれないと考えていました。

しかし、介護用の「トロイメライ」で実験したところ、乱れはあるものの「平均呼吸数」「体動」「呼吸変化」を確認することが成功します。

SIDSや窒息の多くはうつぶせ寝が原因です。うつ伏せ寝時でも実験したところ、呼吸感知を成功したので赤ちゃんに流用可能という結論に達しました。

赤ちゃん用呼吸センサーとして開発するにあたり、製品名を「IBUKI」と名称し、保育園や家庭におけるベビーセンサー開発を本格的にスタートさせます。

ちなみに赤ちゃんの呼吸モニターは非常に難しい為、開発するにあたり、エムアイラボの高島社長にも協力いただきました。

IBUKIの実証実験で分かった課題

その後、「トロイメライ」を改良した、IBUKI試作1号機を実証実験することになりました。社内で実験を繰り返していたため、自信をもって実験をしましたが結果は散々でした。

当初はエアパットを布団の下にひくことを想定していましたが、新生児は体が小さく呼吸が弱いため、布団の下だと呼吸運動がセンサーで感知できず機能しませんでした。さらにエアパットが小さく、少しでも寝返りや動きを起こすとエアパットから体が外れてしまい、センサー感知に支障をきたしました。

逆に布団の上で使用したら、エアパットと布団の両方が柔らかい為、上手く空気を循環させることができず感知が全くできませんでした。

その後、試行錯誤の結果、センサーマットを現在の形へと改良し、本体のプログラムや部品を大幅リニューアルしました。そしてついに実証実験で問題ない機器が完成します。

1号試作機から10台以上改良を行い、半年以上時間をかけて完成させた「IBUKI」は2017年12月に保育園販売スタートさせました。

販売後、浮かび上がった問題点

家庭用ベビーセンサー「IBUKI」の販売は2018年1月に開始しました。「保育園用」「家庭用」ともに順調に販売を伸ばし、お客様から感謝の声をいただくことも多数ありました。

しかし「家庭用」に関してはトラブルも発生します。「IBUKI」は元々、保育園をターゲットに設計開発しており、家庭用に関してはプログラム調整した機器を回していました。そのため、保育園とは全く異なるトラブルが発生します。

1.音量ボリュームが小さい

保育園では本体の音量が大きすぎると、赤ちゃんを起こしえてしまうため、小さめに設定していました。家庭では、深夜の親と赤ちゃんが睡眠中に使用します。そのため、赤ちゃんの呼吸が異常時は警報音で親が覚醒しなくてはなりません。ボリュームが小さい為、本体の警報アラームでは覚醒できるか不安だという声を多くいただきました。

2.寝返りをしてしまうと外れてしまう

保育園では昼寝の2時間程度しかベビーセンサーを使用しません。対して家庭では1日10時間程度使用します。保育園では多少寝返りをしても、センサーマットより外れることありませんが、家庭では大きく寝がえりをするためセンサーマットから外れてアラームが頻発してしまう事がありました。

3.環境や赤ちゃんによって感度が大きく異なる

非接触のVitalセンサーは精密で感度の良いセンサーです。そのため使用する環境によって、センサー感度は大きく異なります。しかしながら、実証実験は協力していただいた自宅など限られた場所でしか確認ができません。そのため、実験で問題がなくても使用する家庭環境によって大きく精度が異なることが分かりました。

「音」「微弱振動」「温度」「湿度」「微風」など全ての環境が悪い方向に働くと、感度不足や感度が強すぎてしまうアンバランスが発生してしまいます。
また、赤ちゃんの呼吸も千差万別です。呼吸が浅い子や深い子など使用者によって異なります。
「IBUKI」は利用者が感度をカスタマイズできません。クレームのたびに機械のオーダーメイド調整しました。

Baby Aiは家庭に特化したベビーセンサー

家庭用ベビーセンサー「IBUKI」の問題点解消とより良い製品を生み出すため、個人家庭に特化したベビーセンサーを生み出す試みがスタートしました。
当初予定では「IBUKI2」としてスタートする予定でしたが、保育園用ベビーセンサーと分かりにいため、「Baby Ai」ブランドとしてプロジェクトをスタートさせます。

スタート直後はIBUKIのプログラムを改良するだけなので、簡単かと思われましたが、ケースの大きさを再考したり、基盤を1から設計しなおすなど大きく様変わりしていきます。
そのため、開発に時間がかかり当初予定していた2018年12月末販売予定を、大きくオーバーしてしまいました。

しかしどんなに遅れようと製品に妥協することは社内全員反対していました。妥協するとお客様に迷惑をかけるだけでなく、自分たちも自信をもって製品を売り出せないからです。

そして「Baby Ai」は「IBUKI」の問題点をクリアして進化したベビーセンサーへと生まれ変わります。

1.IBUKIで発生していたトラブルを解消

本体音量は4段階調整、センサー感度も専用アプリNappleeで5段階調整、マットサイズは40cm×80cmから60cm×90cmへと一回り大きくなりました。ボリュームと感度調整は必須でしたが、寝返り対策としてはマットサイズを大きくすることで対応しました。

2.抱っこボタンを新設

赤ちゃんはおむつ替えや授乳など必ず布団から外れます。布団から外れた際、センサーの電源を切断することも可能ですが、Nappleeと連動しているため不具合が生じてしまう事があります。
そこで一時停止ボタンを押したら30分間はセンサー機能を停止させるボタンを新設しました。Nappleeとも連動しているため、一時停止中は全て機能が動きません。30分経過すると自動的にスタートするので、電源ON/OFFでありがちな押し忘れにも対応しました。

3.温湿度センサーを新設

赤ちゃんが寝ている部屋の温度と湿度を計測し、快適な睡眠を促せる温湿度センサーを設置しました。設定外の温湿度になった際、Nappleeにて違う部屋にいる両親に知らせることができます。

その他にも新設及び改良した点があります。詳しくはBaby Aiの特徴をご覧ください。

家庭用ベビーセンサー「Baby Ai」は1990年から続いた長い研究の歴史があります。今後も歴史をつむげるよう、弊社も精進してお客様の役に立つ製品を開発していきたい所存です。